月の裏側は、あなただけの宝もの

BTSとかジンくんとか。

【センイル】JUNGKOOKを証明するその日まで

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グクちゃんの真っ直ぐな歌声は、甘く澄み透って高く舞い、我々の心を惹きつけて離さない。

 

私が初めてBTSの楽曲を聴いたのは、彼らが『Dynamite』を披露したとき。つまり、私が初めて聴いたBTSの歌声が、グクちゃんだった。透明感に溢れ、歪みが一切なく、心地良いのに真っ直ぐ心の底まで射抜く声。楽曲のストーリーを展開していく主人公として、こんなにふさわしい人はいない。


そう、グクちゃんは、主人公なのだ。


透明感に満ちた歌声、綺麗なのに愛嬌のある顔立ち、腰の位置が高すぎるスタイル、それだけでも食べていけそうな絵の腕前……神様からもらった数えきれないほどのプレゼントを、子どものように無邪気に開け、たくさん努力して、たくさん使って、私たちに幸せを与えてくれる、最高の主人公だ。でも彼はいつも、どこか自信がなさげで、どこか不安そうで、何かに追われるように全速力で走っている。

 

今の自分を見て、いま必要なものが何かを考えるだけであって、あの時はこうだった、こんなに成長したんだ、よくやった、とかはあまり思わないですね。

 

彼は絶対に自分を認めようとしない。どれだけ努力しても、どれだけ賞賛されても、まだ足りない、僕は怠け者だと言う。私は不思議に思っていた。何が彼をそこまで駆り立てているのか。その根源は、どこからくるものなのか。


私は正直、グクペンの皆さんの1パーセントほどしか、グクちゃんのことを知らない。こんな私が、BTS・JUNGKOOKのことを書く資格があるのか迷ったが、今日はチョンジョングク24歳の誕生日。こんな機会でもなければ、多分私は彼のことを書くことはないと思う。だから思い切って書くことにしてみた。BTSの黄金マンネと呼ばれる彼は、何を想い、何を感じているのかを、ほんの少し覗いてみたい。

 

神様からの贈り物


グクちゃんは、神様からたくさんの贈り物をもらった人だ。「あなたはアイドルになって、世界中の人を幸せにしなさい」まるで、そんな使命をもらったかのように。


彼に驚かされることは数知れず。ダンスや歌はもちろん、リレーを走れば何人も抜き、ギターもドラムもできちゃう、絵だって描けちゃう、しかもプロ並みに。YouTube公式チャンネルに投稿されているグクちゃんが監督をした映像作品『G.C.F シリーズ』では、彼の目線で撮影された、素で美しいメンバーの表情が映し出されている。淡く儚さのある質感と、柔らかくて甘いBGM。そして綺麗な音ハメの編集まで……私はこれを観たとき、なんと恐ろしい子なのだろうと思ってしまった。


『BON VOYAGE Season 4』では、動画を一回見ただけでサーモンを捌いてしまっていたし、初めてのキャンピングカーの運転だってお手のもの。道具の使い方がわからないなど、不具合が起きるとお兄ちゃん達から招集がかかり、サラッと解決してしまう。書き出せばキリがないほど、グクちゃんは才能に溢れたオールラウンダーだ。そう、才能に溢れすぎたのだ。


人は、簡単に手に入るものにあまり価値を感じない。炊飯器で炊いたご飯と、一から火を起こして炊いたご飯とでは、きっと全然味が違う。1時間練習をしてバック転ができた人と、1ヶ月間かけて成功した人とでは、達成感はまるで違う。人は努力した分だけ、苦労した分だけ、自分に自信が持てるのだ。神様からの贈り物は、自分を満たす材料にはならない。周りは才能や天性のものを羨むけど、結局、そんなもので自分を埋めることはできない。

 

グクちゃんはいつもいつでも全力だ。時々ブレーキが効かなってしまうほど。何度も何度も納得がいくまでレコーディングし、空き時間があれば発声練習をする。ハードなスケジュールの中『Butter』のMV撮影のために5日間水しか口にしなかったというエピソードも、彼がいかに努力を惜しまず、パフォーマンスに情熱をかけているかがわかる。

「Rather be dead than cool」(情熱無く生きるくらいなら、死んだ方がマシ)。アメリカの世界的ロックバンド『ニルヴァーナ』のヴォーカル、故カート・コバーンの名言だ。この言葉はグクちゃんの腕に刻まれ、人生の指標となっている。


周りからみれば、心配になってしまうほどの底知れぬ情熱。十分すぎるほどの努力。でも彼のなかではきっと、何か満たされない、何か足りない、そんな虚しさが渦巻いているのかもしれない。神様からの贈り物が多すぎるあまり、抱えきれず、溢れてしまう。グクちゃんは、そんな想いと闘ってきたのかもしれない。

 

いいえ、本当に怠け者です(笑)。僕がもし一人だったら、たぶんずいぶん約束を守れなかったと思います(笑)。でも団体で動く時は、僕がちゃんとしていなかったらだめですから。本当に怠け者ですし、あ、考え事もちょっと多いですね。

 

もし月が輝いていなければ……


私は心のどこかで、いつもこう思ってしまっていた。「グクちゃんだからできちゃうよね。だって多才だし、器用だもん」と。彼はおそらく、努力よりも、才能を認められてきた人だ。それゆえに、とても高い期待を背負ってきた人だ。

 

人に思われる僕のイメージがすごく羨ましいです。黄金マンネと言ってくれますが僕はそう思わないので、そういう風に見えるようにもっと頑張らないといけない。

 

ドキュメンタリー『BREAK THE SILENCE』で、グクちゃんが語った言葉だ。「黄金マンネ」「天才肌」そんな周りからの評価が、「完璧で当たり前」という果てしなく高いハードルを彼に背負わせてしまったのかもしれない。「人に思われる僕のイメージがすごく羨ましい」と語るグクちゃんは、そんな自分に追いつくために、逃げることなく必死に走っている。とてつもなく大きな呪いに、立ち向かっているような気がした。

 

あの月が輝いていなければ 人々は月に気づくのかな

 

『In the SOOP』ep1で宿に向かう車中、助手席に座るナムさんに、グクちゃんはこんな歌詞を提案していた。月の光は、太陽からの贈り物だ。そして月の裏側は、誰も知ることができない。人々はその光だけを見て、「月は美しい」と言う。「もし神様からの贈り物を全て奪われてしまったら、もしみんなの思う僕と本当の僕が違ったら、人々は自分を愛してくれるのだろうか」そんな風にも聞こえた。

 

一人の人間としてのJUNG KOOK、その人として認められたいです。
僕は将来もずっと音楽を続けたいです。本当に遠い将来になると思いますが、音楽で必ず証明して見せたいです。

 

グクちゃんが語る言葉には、「認められたい」「証明したい」というワードが多く含まれている。たくさんの賞賛を得て、結果を出し、多くの人から評価をされてきたBTS。もちろんこれは、7人だけの力ではないことを、痛いほど分かっているのだと思う。それがゆえに、「みんなが評価しているジョングクは、本当に僕なんだろうか。」「僕の実力や努力なんて、これっぽっちも反映されてないのではないのか。」そんな想いが渦巻いているようにも見えた。そんな自分への虚しさや劣等感が、計り知れぬ情熱の根源となっているのだろうか。

 

BTSにはメンバーもいて、事務所もあって、ファンの皆さんがいるからこそ、ここまで来られました。ただ、自分一人でも認めてもらえるんだろうかということは、気になります。それで、一回一人で身を投じてみたい気持ちはあります。やってみたいことも多いですし、成し遂げたいことも多いですし。

 

きっと彼は、努力と経験で培ってきたもの以外を全て捨てた、"空っぽのジョングク“を認めてもらえるのか、それが知りたいのかもしれない。「みんなが好きなジョングクは、ちゃんと僕自身なのだろうか」と。

 

将来僕が有名人ではなくなっておじさんになったとき、僕のそばには誰が残るかな。


私はいつか、「これがJUNGKOOKです!」と、満面の笑顔でステージに立つ彼の姿を見てみたい。そして、例え自分から何もかもがなくなったとしても、月が輝かなくなったとしても、あなた自身を愛してくれる人が、こんなにもたくさんいるということを、知ってくれる日が来ることを願っている。

 

幸せな1年になりますように。

お誕生日、おめでとう。